医療法人の業務は「本来業務」「附帯業務」「付随業務」「収益業務」の4つに大別されます。「本来業務」以外は、基本的に事前の申請手続きが必要なもの、監督官庁から規制を受けるものがありますので注意が必要です。
・病院
・医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所
・介護老人保健施設
これらの運営は医療法人の「本来業務」とされ、この業務を行う体制が確保されていることが医療法人設立認可の条件となります。
逆に、医療法人がこれらの施設を全て閉鎖、売却して1年以上の期間が経過すると法律に基づき設立認可取り消しの対象となり得ます。
平成19年第5次医療法改正により、医療法人が地方自治法第244条の2の第3項に規定する指定管理者として公の施設である病院、診療所又は介護老人保健施設を管理する業務は「本来業務」として認められることとなりましたが、指定管理施設である病院、診療所又は介護老人保健施設のみを運営する医療法人の設立は認められていません。
「本来業務」は事業所の施設名、住所が定款(寄附行為)に記載されますので、病院、診療所又は介護老人保健施設の施設を増設・移転する場合、名称を変更する場合などは事前に都道府県知事に対し「定款(寄附行為)変更認可申請」を行い、その認可を受ける必要があります。
医療法などに具体的に定められている業務ではなく、「本来業務」に付随する下記のような業務を指します。
・病院等に通院・入院する患者もしくはその家族等の便宜のために、その病院等の敷地内で行われる駐車場業や施設内で行われる売店の営業、自販機の設置など
・病院等の施設外で行われる業務のうち、当該病院等に通院する患者の搬送業務など、その病院等の医療や療養に直接的に連なるもの
病院等の患者とは無関係の駐車場賃貸業などは「付随業務」に含まれず、行政指導の対象となります。
「付随業務」は本来業務の一環と解釈されますので、個別に定款(寄附行為)に記載されることはなく、都道府県知事の認可なども不要です。
医療法人は「本来業務」に支障のない範囲で以下の業務を行うことができます。
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第1号 医療関係者の養成又は再教育
・ 看護師、理学療法士、作業療法士、柔道整復師、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゅう師その他医療関係者の養成所の経営。
・ 後継者等に学費を援助し大学(医学部)等で学ばせることは医療関係者の養成とはならないこと。
・ 医師、看護師等の再研修を行うこと。
第2号 医学又は歯学に関する研究所の設置
・ 研究所の設置の目的が定款等に規定する医療法人の目的の範囲を逸脱するものではないこと。
第3号 医療法第39条第1項に規定する診療所以外の診療所の開設
・ 巡回診療所、医師又は歯科医師が常時勤務していない診療所(例えば、へき地診療所)等を経営すること。
第4号 疾病予防のために有酸素運動施設であって、診療所が附置され、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置(疾病予防運動施設)
第5号 疾病予防のために温泉を利用させる施設であって、有酸素運動を行う場所を有し、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置(疾病予防温泉利用施設)
第6号 保健衛生に関する業務
@ 薬局
A 施術所(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律、柔道整復師法に規定するもの。)
B 衛生検査所(臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律に規定するもの。)
C 介護福祉士養成施設(社会福祉士及び介護福祉士法に規定するもの。)
D 介護職員養成研修事業(地方公共団体の指定を受けて実施するもの。)
E 難病患者等居宅生活支援事業(地方公共団体の委託を受けて実施するもの。)
F 病児・病後児保育事業(地方公共団体の委託又は補助を受けて実施するもの。)
G 介護保険法に規定する訪問介護、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、認知症対応型通所介護など
H 介護保険法にいう居宅サービス事業、居宅介護支援事業、介護予防サービス事業、介護予防支援事業、地域密着型サービス事業、地域支援事業など
I 助産所
J 歯科技工所
K 福祉用具専門相談員指定講習
L 高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条に規定するサービス付き高齢者向け住宅の設置。(ただし、都道府県知事の登録を受けたものに限る。)
M 特定労働者派遣事業(ただし紹介予定派遣をする場合や派遣先がへき地にある場合などの条件下に限る)
N 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第77条に規定する地域生活支援事業として実施する日中一時支援事業
O 障害者の雇用の促進等に関する法律第34条に規定する障害者就業・生活支援センター
P 健康保険法第88条第1項に規定する訪問看護事業
Q 学校教育法第1条に規定する学校、同法第124条に規定する専修学校及び同法第134条第1項に規定する各種学校並びに児童福祉法第39条第1項に規定する保育所及び同法第59条第1項に規定する施設のうち、 同法第39条第1項に規定する業務を目的とするもの(以下、「認可外保育施設」という。)において、 障害のある幼児児童生徒に対し、看護師等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助を行う事業
R 認可外保育施設であって、地方公共団体がその職員、設備等に関する基準を定め、当該基準に適合することを条件としてその運営を委託し、又はその運営に要する費用を補助するもの。
第7号 社会福祉法第2条第2項及び第3項に掲げる事業のうち厚生労働大臣が定めるものの実施
第8号 有料老人ホームの設置(老人福祉法に規定するもの)
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「附帯業務」も「本来業務」と同様に事業所の施設名、住所が定款に記載されますので、新たに業務を始める場合、既存の施設を移転する場合、名称を変更する場合などは事前に都道府県知事に対し「定款(寄附行為)変更認可申請」を行い、その認可を受ける必要があります。
なお、「本来業務」を行わず「附帯業務」のみを行う医療法人を設立することは医療法の趣旨に反するものとして認められません。
「本来業務」と直接関連しない物品・サービスの提供を指します。医療業務の非営利性に反しますので、認定を受け社会医療法人となった場合を除いて、医療法人が「収益業務」を行うことはできません。
「勘定科目内訳書」の記載などで発覚することが多く、行政指導の対象となります。
(例)
・通院患者と関係のない不動産賃貸
・医療施設内での歯ブラシ、コンタクトレンズの販売
・他の医療法人等に対するコンサルタント
・講演、執筆、出版活動(役員等が個人で行う場合はこれに該当しない)
当然ですが、これらを定款(寄附行為)に記載することはできません。
社会医療法人の場合は、認定取得手続きの一環として行われる定款(寄附行為)変更の際に定款(寄附行為)に収益業務の種類を列記することとなります。
社会医療法人であっても定款(寄附行為)に記載していない収益業務を行うことはできません。